
人事評価制度

(1) 人事評価システムの問題点
人事評価制度は、極めて効果的な経営管理システムです。弊社の関与先で、人事評価制度を策定・運用された企業様で、次のような成果が上がりました。
①3か月で、月商2,500万円から月商4,800万円(卸売業)
②18か月で、年商3.6億円から年商8.4億円(旅館業)
③約8年で、年商2.5億円から64億円(小売業)
④約8年で、年商8億円から45億円(建設業)
➄約1年で、年商8億円から12億円(製造業)
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ところが、人事評価制度の構築・運用において、失敗が多いことも事実です。
弊社に寄せられたご相談には、次のようなものがありました。人事評価制度を構築・運用する際には、このような失敗が起きないように注意が必要です。
①職能要件書が完成しなかった。
・作業量が多くて完成できなかった。そのため人事評価制度に進めなかった
・完成したがメンテナンスできなかった。人事評価シートの修正に使えない
②人事評価シートが役に立たなかった
・こんな評価シートでは評価にならない
・評価はしているが、社員に公表できない
・評価に社員が納得していない
・上司評価にバラツキが大きい
・人事評価制度を導入してから会社がおかしくなった
③目標面接で指導ができていない
・評価結果に部下が納得していない。反発がある
・次期の目標・指導内容が設定されていない
・次期の目標・指導内容が設定されていても、実際には行われていない
・上司が指導が出来ておらず、人事評価制度の意味がない
(2)人事評価制度の留意点
人事評価制度とは、従業員の業績や努力を評価し、給与賞与・昇進昇格・教育訓練などの処遇を決定する制度です。人事評価制度を策定するに当たっては、以下の点に注意すると良いでしょう。
①評価の目的
人事評価制度を実施する目的は何かを明確に伝えることが大切です。たとえば、組織や個人の目標達成、従業員のモチベーション向上、人材育成などが目的となります。
ただし、因果関係を抑えることが極めて重要です。たとえば、モチベーションが向上して目標が達成されるわけではありません。目標が達成されるからモチベーションが向上するのです。また、その成果を正しく伝えることによって、人材育成が始まります。
したがって、何を目的にするにしても、部下の活動の成果を把握する必要があります。
②評価の基準
人事評価制度における評価基準は何かを具体的に示すことが必要です。たとえば、年功評価、能力評価、業績評価、コンピテンシー評価などが基準となります。また、それぞれの基準において、どのような項目や指標を用いるかも説明する必要があります。
ただし、利益を評価の基準にすると失敗します。会社がダメになります。ピーター・ドラッガーは、事業の目的は「顧客の創造である」と述べており、この考えを人事管理にも適用しています。私的利益の獲得ではなく「顧客の創造」を念頭に置いて人事評価制度を構築してください。
③評価の方法
人事評価制度における評価方法は何かを分かるように説明することが重要です。たとえば、目標管理制度(MBO)、コンピテンシー評価、多面評価などが方法となります。また、それぞれの方法において、誰がいつどのように評価するかも明確にします。
ただし、MBO、コンピテンシー評価、多面評価というのはシステムのことであって、評価の方法ではありません。どの方法を用いるにせよ、正しく評価する方法が必要です。これを考えなければ、MBO、コンピテンシー評価、多面評価も機能しなくなります。
④フィードバック
人事評価制度におけるフィードバックはどのように行うかを伝えることが大切です。フィードバックは、従業員の成長や改善につながるため、適切なタイミングや内容で行うことが必要です。
「君は3点だ」「君は4点だ」と評価結果を伝えることは誰にでもできます。ところが「君は1点だ」「君は2点だ」と伝えるのは極めて難しいのです。
部下に「君は1点だ」と伝えると、納得しないかもしれません。反抗するかもしれません。その結果、部内の仕事がうまく進まなくなるかもしれません。
しかも、「1点の部下」と「3点の部下」では、今後の教育内容が異なります。「1点の部下」を「3点」と評価すると、今後、「4点」になるような教育をすることになりますが、「1点の部下」に「4点」の教育を行うことは無理です。
したがって、部下が納得するようなフィードバックの仕組みを作っておく必要があります。それなしで、評価面接や目標面接を行うことは、絶対に無理なのです。

- 目 次 -
1.人事評価制度とは何か
(1)人事評価制度
(2)経営と人事評価
2.人事評価制度の構築
(1)人事評価制度の構築
(2)人事評価シートの作成
3.評価要素(評価項目)
(1) 評価要素を決定する手段
(2)人事評価要素の種類
(3)評価要素の連鎖
(4)パフォーマンス・ドライバー(成果誘因)
4.評価基準
(1) 成果指標
(2) 重要業務
(3) 技能・知識、執務態度
5.人事評価制度の運用準備
(1)人事評価シートの検証
(2)評価決定会議
(3)人事評価制度運用マニュアル
6.人事評価制度の運用
(1)評価シートによる教育
(2)評価
(3)処遇
(4)賃金水準
(5)職能給型賃金制度
(6)成果主義賃金制度(ブロード・バンド型賃金制度)
7.人事評価制度 策定スケジュール

1.人事評価制度とは何か
(1)人事評価制度
人事評価制度の目的は、会社の成長と発展です。
会社が成長・発展するために「仕事の仕方」を(改善し)明確にすることが必要です。
つまり、まず、「成果のあがる仕事の仕方」を明確にしなければならないのです。
これをやらずに人事評価制度をつくると、経営者や管理者がどんなに努力しても、
①社員の仕事の成果
②社員のスキルアップ
③社員のモチベーションアップ
は望めません。なぜなら、成果の上がらない仕事の仕方を社員に押し付けているだけからです。成果の上がる仕事の仕方を明確に示すものが「人事評価シート」です。
成果のあがる仕事の仕方がわかったら、それを社員の皆様に実践していただかねばなりません。ここで用いられるのが、人事評価制度でいう
④評価、フィードバック、目標面接
⑤教育訓練
⑥処遇(昇進昇格、昇給、賞与)
です。ところが、上司評価と本人評価が食い違っていて評価結果を部下に納得させられない。そのためフィードバックがうまくいかず、次期目標が立てられないことが多々あります。
一方、人事評価制度による教育訓練とは、どのように行うかを指導できていないコンサルタント、処遇に結び付けることが難しいという会社がほとんどです。
このように、構築方法・運用方法が誤っていて、機能しない人事評価制度が日本中に溢れています。
人事評価制度を構築し、あるいは見直しするときには、上記の①~⑥ができるということは、どのようなことであるかを真剣に問い直す必要があります。
少なくとも、テンプレートにある評価項目と評価基準を継ぎはぎして出来るようなものではないのです。
(2)経営と人事評価
人事評価が、経営のシステムである以上、経営戦略の実現に関わるものであることは明らかです。
いま経営戦略上の「売上高」が設定されたとします。
製造業ならば、その売上高に等しい製造が行われなければなりません。小売業ならば、その売上高に対応する「仕入高」が必要になります。これらは、通常、経営計画(中期経営計画)で計画され、実行されます。
このとき、「売上高」が計画通りに達成されるように、目標管理や人事評価制度が用いられます。
したがって、人事評価制度で管理しているセールスマンの「売上額の総和」は、経営計画の「売上高」と一致しなければなりません。
工場内で働く技術者個人の生産額は、合計すると経営計画上の生産総額に一致しなければなりません。
会社は、経営計画を立てることが目的ではありません。人事評価制度を運用することが目的でもありません。「経営目標の達成」を行うのが目的です。
経営は、結局は「世のため、人のため」に行われるもので、会社の中の誰かの個人的な利益のためだけに行われるものではありません。
人事評価制度は、その経営目標が達成されるようにすることを支援するシステムです。そのために評価し、指導し、成果あげることを任務としています。
その関係を示したものが図1です。管理しているものは、この図でいえば、経営計画で設定された「毎日の業務」です。
なお、ピーター・ドラッガーは「創造する経営者」のP127に「事業の目的は、顧客の創造である」と述べております。当たり前のことと思われがちですが、ドラッガーは「事業の目的は利益である」とはしていません。同署の人事管理において、「事業の目的を利益におくと、事業は失敗する」とも述べています。
コンサルのティングを行う時には、重々、注意してください。知らず知らずのうちに、利益が目的になっています。とくに、中期経営計画や人事評価制度を構築するときには、利益を目的にしてはいけません。必ず、失敗します。

図1 経営計画と人事評価制度
2.人事評価制度の構築
(1)人事評価制度の構築
人事評価制度を作るとは、最低限決めることは次の3つです。
①階層・職種検討表
②階層別職種別人事評価シート
③人事評価制度運用手続き(人事評価運用マニュアル)。
この3つを決めると、人事評価制度は運用できます。
階層・職種検討表とは、社内に、どのような職種(事務、営業、施工など)と、
どのような階層(一般職、監督職、管理職など)があるかを一覧表にまとめた
もので、人事評価制度を構築し、運用する場合の出発点となります。
いま、会社の職種が事務、営業、施工の3種類で、
階層が一般職、監督職の2階層であるならば、
職種(3)×階層(2)= 6 種類の人事評価シートが必要だということになります。
つまり、これによって、人事評価制度構築の作業量が決定されます。
たとえば、職種が7で階層が9の場合、63種類の人事評価シートが必要になります。普通の中堅中小企業で63種類もの人事評価シートを作成し、運用し、維持(メンテナンス)出来るでしょうか? 無理です。できるわけがありません。
仮りに、職種が7であっても、階層が2であれば、14種類の人事評価シートでよいということになります。人事評価制度を構築し、運用するときには、最初に、このことを検討しておくことが大切です。
ポイントは、会社の実態に合わせて作成するということです。とくに階層が問題です。中小企業の場合は2階層(一般職、監督職)で十分な場合もありますし、会社によっては1階層(一般職)という場合もあります。階層を無理に増やさないことが大切です。
(2)人事評価シートの作成
人事評価シートをつくるためには次の3つを決めなければならりません。
① 評価要素(定義、着眼点)
② 評価基準
③ ウェイト
「評価要素」とは「何を評価するか」ということです。その内容を示したものが評価要素の「定義」であり、「何を見て評価するか」を示したものが「着眼点」です。
「評価基準」とは、各評価要素が、どの程度できているかを示すもので、通常は
1点~5点(s,a,b,c,d)で評価されます。
「ウェイト」とは、人事評価シートに書かれた評価項目の重要性を示すものです。人事評価シートに書かれた評価項目は、すべて重要なものですが、重要さの程度が異なることが普通です。その重要さを表すものがウェイトです。
この他に、必要に応じて、「人事評価結果フィードバック・シート」「人事評価訓練シート」を作成することがありますが、ここでは説明を割愛させていただきます。
3.評価要素(評価項目)
(1) 評価要素を決定する手段
人事評価シートをつくるとき、まず、「評価要素」を抽出しなければなりません。抽出の仕方は、いくつかの方法があります。次の4つの方法のうち、1)職能要件書はお勧めいたしません。2)~3)はどれをお使いになっても成果はあがります。
1) 職能要件書
職種・階層ごとに、いまやっている仕事を分析して、いわゆるTaskを抽出します。そして、Taskの中で重要なものを、「評価要素」とする方法です。
能力主義人事評価制度では、この方法が取られてきました。しかし、この方法はダメです。その理由はいくつもありますが、そのいくつかをあげると、次のようなものがあります。
①職能要件書を作成する作業が膨大で、多くの会社が、この段階で人事表制度
作成を断念しています。
②職能要件書は業務の内容が変化すると、書き換えなければならないが、メン
テナンスが追い着かない。
③人事部を含めて、誰も職能要件書を参考とすることがない(読んでもいな
い)。
④職能要件書を用いた人事評価制度では、人事制度はできても、成果をあげる
ことができない。
2) 中期経営計画
中期経営計画のアクション・プランから、重要なものを、「評価要素」として抽出する方法です。
ある卸売業者から売上アップのコンサルティングの依頼を受けたことがありました。セールスマンに同行営業をおこなったところ、「商品説明」ができないということがわかりました。このとき、この会社のセールスマンに売らせることは無理と考えられました。
そこで、営業の方法を変えて、中期経営計画を策定し、その中で定まった活動を人事評価制度の評価項目としたのです。
この会社は、もともと、年商3.2億円。つまり月商約2500万円でしたが、人事表制度構築中から成果が上がり始め、3か月後には月商4800万円を達成し、売上が倍増したのです。
当社が人事評価制度で成果をあげたのは、その後も、このパターンを用いたからです。つまり、「1.人事評価制度とは何か (1)人事評価制度」で書きましたように、「成果のあがる仕事の仕方」を明確にしたわけです。
問題点としては、①中期経営計画を策定できること。②成果のあがる販売(製造)方法を構築できることです。これが出来なければ、成果のあがる人事評価はつくることはできません。
3) 戦略マップ
戦略マップはバランスト・スコアカードの手法です。中期経営計画よれも簡単で、活動項目も人事昇華制度に適用するのに適しています。
「わかりやすい」のがウリで、戦略を人事評価シートに落とし込む場合によく使われています。
戦略マップも「成果のあがる仕事の仕方」を明確にすることができますので、中期経営計画を用いる場合と同様の成果が得られます。
4) コンピテンシー分析
コンピテンシーの特徴は、高い業績をあげている社員の行動特性に学ぶということです。高い業績を上げている人をモデルとして選び、そのモデルがどんな行動をとつているか分析します。
コンピテンシーとして抽出されるのは、成果に結びつく、顕在化された能力です。分析にあたっては、「成果」よりも、成果に結びつく「行動」や「プロセス」が重視されます。このことから、能力主義人事評価制度の欠点が是正されると期待されています。
(2)人事評価要素の種類
成果を出せない社員に、ただ闇雲に「成果を上げろ」と言っても、成果はあがりません。管理者の仕事は、目標を示し行動を促すことです。
では、どういうものが目標なのでしょうか? その目標を示したものが人事評価シートなのです。この中には、
①実現して欲しい成果(期待成果)
②その成果を上げるための重要業務(重要業務)
③その重要業務を実施するために必要な知識・技能(知識・技能)
④その重要業務を遂行するために必要な勤務態度([情意]とも呼ばれます)
が示されています。目標というのは、期待成果だけでなく、これを達成する方法(重要業務、知識・技能、勤務態度)を含むものです。
目標管理はそのようにして運用されてきました。成果主義であるバランスト・スコアカードも、そのような仕組みになっています。成果主義だからといって、結果の数値だけを見ているわけではなく、成果を上げるためのプロセスも評価しています。
(3)評価要素の連鎖
評価要素の中で、最初に設定するものは「成果目標」です。これは、経営計画から降りてきます。
「成果目標」は職種によって異なります。いま何らかの「成果目標」が決まったとします。それを、簡単化のために、営業を例にとり「売上高」としておきます。
そうすると、次に、どのように顧客に働きかければ成果(売上高)が達成されるのかを検討して、成果目標を達成するための「重要業務」が選び出されます。それを、簡単化のために「訪問件数」と「受注確率」としておきます。
重要業務を達成するためには卓越した知識・技能が必要です。たとえば、訪問件数を増やすために「スケジューリング」と「顧客情報」という知識、受注確率を高めるために「ロールプレイイング」と「提案書」という技能が必要だとされたとします。
最後に、訪問件数や受注確率を達成するために、どんな態度で臨めばよいかを検討します。訪問件数を達成するためには「粘り強さ」「積極性」、受注確率を高めるためには「明朗性」「緻密さ」が必要だと決定されたとします。
そうすると、これをまとめると、図2のようになります。これが、人事評価シートの基本構造を表しています。

図2 評価項目の相互関係
この図では、矢印の左側が十分条件で右側が必要条件です。つまり、売上高を確保するには何が必要かという観点から検討したものです(左→右)。
本当に、これでよいかを検討するためには、矢印の右側が成立したとき、矢印の左側が成立するかどうか確認しなければなりません(左←右)。
いま、目標とする売上が上がっていなかったとします。そうすると、営業会議で「馬鹿者!」と叱るのが普通です。しかし、叱ったところで成果はあがりません。
人事評価では、目標売上があがっていなかったとき、訪問件数が不足していたのか、受注確率が低かったのかを見ることになります。
そして、受注確率が低いことが判明したならば、提案書の書き方がまずいのか、商談の仕方がまずいのかを検討します。
ここで、商談の仕方がまずいということがわかったならば、部長は、叱るよりも、ロールプレイイングにより商談が有効商談になるように指導することになります。
そうすれば、次月から、単に叱るよりも成果が上がるはずです。これが人事評価制度で成果があがる 1 つの理由なのです。
人事評価の要素というのは、このように達成できない理由に降りて行って、そこを指導できるように作らねばならないのです。
もし、これができなければ、人事評価の意味はありません。指導(教育)もできないし、成果もあげられないからです。
(4)パフォーマンス・ドライバー(成果誘因)
評価指標を選択するとき、結果指標ではなく、結果をもたらすパフォーマンス・ドライバーを成果指標にとると有効です。
たとえば、品質の成果指標として「歩留率」を取ったとします。ところが、「歩留率」を、どんなに測定したところで、「歩留率」自体は向上しません。
他方で、歩留率の向上をもたらす、成果誘因(パフォーマンス・ドライバー)というものがあり、それは会社ごとに、職種ごとに異なりますが、通常は、作業手順の改善であったり、作業方法の訓練であったり、機械・材料の変更がそれにあたります。
この場合、作業手順の改善の程度、作業方法の訓練進捗、機械・材料の変更計画の進展が高まると、歩留率が向上します。
単に事後的な結果のみを追求するのではなく、その結果に至るまでのプロセスを見るためにパフォーマンス・ドライバーという「先行指標」を把握することで、業務活動そのものをも管理の対象にすることができます。
ある業務を遂行するときには、「その結果をどのモノサシで測るか」ということよりも、「どのようにその業務を行えばよいかというモノサシ」の方が役に立つことが多いのです。
4.評価基準
次に、評価基準をつくります。評価基準の作り方は、成果指標、重要業務、知識・技能、情意(執務態度)によって異なります。
(1) 成果指標
①成果の分布
評価結果は、社員が10人であれば、5点1人、4点2人、3点4人、2点2人、1点1人になるように作ります。
なぜならば、人の能力は次図のように正規分布しているので、仕事の成果も正規分布していると考えられているからです。5点・4点が 1 人もいない評価シートは厳しすぎ、1点・2点が 1 人もいない評価シートは甘すぎの可能性があります。

図3 評価の分布
いま、会社で売上高が最高の人の売上が1000万円ならば1000万円が5点です。
最低の人が200万円ならば、その人が1点です。
そうして、1000万円と200万の中間である600万円の人が3点、
600万円と200万円の中間である400万円の人が2点、
600万円と1000万円の中間である800万円の人が4点と大雑把に仮設定しておいて、5点1人、4点2人、3点4人、2点2人、1点1人になるように調整します。
② 成果の評価基準は現在の数値をもとにつくる
このとき、この数字は低すぎるという理由で、たとえば2000万円を5点にしたらどうなるでしょうか?
1000万円より高い数字の人は誰もいませんから、2000万円を売り上げる方法を誰も教えることができません。ここが重要です。
いまの目標が低すぎるという理由で、目標だけを高くしても、成果は上がりません。もし、成果をあげようと思うならば、2000万円を売り上げられる仕事の仕組みを、まず、作らねばならないのです。
(2) 重要業務
重要業務の評価基準は次のようにします。
1点:やっていなかった
2点:やったり、やらなかったりしていた
3点:常に、やっていたが、やり方が十分ではなかった
4点:常に、十分な内容でやっており、成果が高かった
5点:成果が高く、より優れた方法を開発した
「これ簡単すぎない?」という方もおられると思います。簡単だから良いというわけではありません。1点、2点…5点の差が明確なものが良い基準です。
つまり、成果が上がらないのは、重要業務をやっていないからです。したがって1点。常にやっていたら、一定の成果が上がるので3点です。その間が2点になります。
それは、やったり、やらなかったりしているから3点ほどの成果はあがっていなかったということです。
4点・5点は、仕事が出来ることは当然で、成果や改善というレベルになります。大切なことは、業務遂行度の差異を明確に表すことです。
注意しなければならないのは、評価シートに書かれた手順を使わずに成果を上げている人が時々いるということです。
その手順は、評価シートに、いま示されているやり方よりも優れているかもしれません。その場合は、その優れたやり方を評価シートの中に取り込むようにします。
このことは、人事評価制度の改善につながるもので、非常に価値の高いものです。だから、5点なのです。
(3) 技能・知識、執務態度
基本的には、重要業務と同じです。表現の仕方が少し変わります。本稿では割愛いたします。
5.人事評価制度の運用準備
(1)人事評価シートの検証
以上で人事評価シートが完成しました。では、すぐに評価につかえるかというと、そうではありません。出来上がった人事評価シートが、「本当に」使えるかどうか不安です。そこで、
①「本当に、これで、評価できるのだろうか」。
②「社員は納得するだろうか」。
を「経営者の目線」「社員の目線」で、確認する必要があります。これを人事評価シートの検証といいます。検証には、妥当性確認、適切性確認、有効性確認の3つがあります。
社長が「本当に、これでよいのかな」と疑問をお持ちになったときは、この段階で評価シートを見直す必要があります。なぜならば、社長が、「この評価シートはやはり使えない」と判断されますと、その評価シートは1年もしないうちにお蔵入りとなるからです。
「専門家(コンサルタント)が、これでいいというから、いいのだろう」などとお考えになってはダメです。人事評価シートの検証は、今後の人事評価制度の運命を決定しますので、必ず実施してください。
「でも、コンサルタントが検証なんていわなかった」「検証の方法を聞いても、コンサルタントが知らなかった」という場合もあると思います。ハッキリ言って、そんなコンサルタントは避けた方が無難です。
1) 評価シートの妥当性
①全社員を職種・階層ごとに相対評価し、評価の高い順に並べる。
これを「相対評価」といいます。
②全社員を評価シートを用いて評価し、評価の高い順に並べる。
これを「絶対評価」といいます。
③相対評価と絶対評価を比較する。
④両者が同じ内容ならば、利用可能性はOKです。
⑤もし、食い違っていれば、評価要素、評価基準、ウェイトを修正します。
⑥両社が一致するまで②~⑤を繰り返します。

図4 評価シートの妥当性
2) 評価シートの適切性
○ いま、一般職に在級している社員が10人いるとする。
① 絶対評価による評価結果(評価合計点)の度数分布表を作成する。
② 次表のCase1のような分布になっていればOK
③ Case2、Case3のようになっていれば評価シートを修正する。
表1 絶対評価の度数分布

3) 評価シートの有効性
普通は、絶対評価の結果は、Case Aのようになります。すなわち、一生懸命に努力して(執務態度5点)、知識・技能を習得して(知識・技能5点)、それでも現場では完全には出来なくて(重要業務4点)、成果は普通(成果目標3点)となるのが普通なのです。極端な場合はCase Bのようになりま す。この場合は問題ありません。
しかし、Case Cのようになるのは間違っています。なぜなら、努力している以上に成果があがっているからです。この場合、重要業務と設定していた評価項目が、実は重要業務ではなかったという可能性があります。
同様に、Case Dでは、知識・技能が誤っていそうです。Case C やCase Dが頻繁に発生するようならば人事評価シートの見直しが必要です。
表2 絶対評価の有効性
